オフィステクノロジーの変化の10年
この頃までに、いくつかの会社用に教材作りをするようになっていましたが、次は英語教育で有名な ALC 社よりプロジェクトの依頼があり、『ABC Land』と同様、MATメソッド®で構成された、小学生向け『Kiddy Cat 6年間コース Bコース』を書くことになりました。この教材は沢山の副教材、ビデオ(今やDVDですね)、テープ(同様にCD)、カードなどが同封されており、アルクの大勢の先生がたにMATメソッド®を使って教えていただいています。
(http://www.alc.co.jp/kcschool/course/b_course/ Bコース)
上記に少しお話しした、私が何年も前に書き始めていたMATメソッド®の教授本『こうして教える子どもの英語』が1993年についにアプリコットから出版されました。ただしこの本の初稿は英語で執筆したのですが、実際の本は日本語で出版されました。当時日本国内で「子どもの英語」を教えているのは日本人の先生がたであり、ALT(Assistant Language Teacher)がいなかったからです。
この本の中では、カードの持ち方から始まり、そのフラッシュの仕方、そして生徒たちが授業の80% を発話するように仕向ける工夫など、かなり詳細に教えるテクニックを紹介しています。時代は変わり、今は英語版を出版してほしいと言う要望を頂いています。(残念ながら2023年現在、英語版の出版はございません。)
LET’S GO の誕生
1989年に、私はニューヨークのオックスフォード大学出版局(本社は英国)のSenior Editorから、日本の英語教育市場では、新しい英語の教科書としてどういったものが求められているのかという相談を受けました。当時の日本の英語のテキストといえば、英語圏で英語を学ぶ生徒のために書かれたESL教材だけで、週に一度だけしか英語を学ぶ機会の無い日本人の生徒に適したテキストがありませんでした。そこで、私は以下のように答えました。
生徒用の教科書として必要なことは:
- 文法を基調とし簡単にコミュニケーションが学べる、系統立てられたテキストであること
- ロボットのようにではなく、ナチュラルに英語を話すことを学ぶことが必要であること
- 段階的に学んでいくこと
- 文章の作り方を学ぶこと
- 質問の仕方を学ぶこと
- 学んだことを応用していくこと
- 読み方と読んだことを理解できること
- 書き方と書いたことを理解できること
- 4技能をバランスよく学ぶこと
先生用としては:
- 教え方を知る必要があること
- 何を教えるかを知る必要があること
- 各ページは先生と生徒の双方にとって明確であること
- 各ページは使いこなせるおもしろいものであること
- 各ユニットは関連性があり、次のユニットにつながること
- 先生が忘れないように、必ず復習のユニットがあること
- 指導マニュアルには、何を教えるかだけでなく、どのように教えるかが示されていること
- 指導マニュアルには、新しいアイディアとともに、指導のテクニックが含まれていること
- 先生がそれぞれの生徒の学習スタイルに合わせて使えるように、多種多様な手法が含まれていること
私の答えを聞いた Senior Editorは、ただちに原稿を提出するように言いました。私は言われたとおりに出してみました。結果それが受け入れられたのです。しかし最初の Book One が完成するのになんと3年もかかりました!英国や欧州、中東などの他の市場から多くの様々な要望が続々と入ってきたため、なかなか完成させられなかったのです。
しかし最終的には、自分たちのやり方を通すことにし、一周回って、私が最初に提示した案に基づいて作られた本が出版されることになったのです!MATメソッド®が採用されたのでした!その後の編集は順調に進み、次から次へと他のレベルが出版され、間もなく“LET’S GO”として6レベルが揃いました。
名前をつける作業も楽しかったですが、“LET’S GO”がベストでした。( “LET’S GO”は “Ritsuko”にも聞こえるのです。)
最初の一冊を仕上げるのに時間がかかったもう一つの理由は、私が日本、共著者が台湾、そして編集者がニューヨークと、バラバラに住んでいたからです。当時は原稿全てがタイプライターで打たれ、郵送されていたのです!
ひとつの原稿が届いてから、それを送り返し、相手の返事が返ってくるのに、およそ1カ月かかったのです。
その後、ワープロを手に入れました。なんと素晴らしい発明なのでしょう!私はブラインドタッチがあまり得意ではなかったので、ワープロのおかげで、間違えてタイプするたびに消しゴムまみれになることも無くなりました。
次はオックスフォードが提案してくれた、ファックスの登場です。
まだその時代は、一枚の長い感熱紙がロールになったもので受信していたので、受信したたくさんの原稿がリボンのように長く連なって床に落ち、それを切り離して順番に揃えて行く作業は、大変でした。
タイプライター、ワープロとファックスの後には、コンピューターの登場です!これもまた素晴らしい発明でした。原稿を書いたり編集したりする作業が大変楽になりましたが、ファックスは依然として、1本の長い原稿をだらだらとカールした状態で吐き出し続けました。そこでオックスフォードは、電子メール(e-mail)アドレスを取得するよう勧めてくれたのです。しかし、面倒なファックスから開放された喜びもつかの間、それまでの私たちののんびりとしたやりとりは、至急返事が要求される大忙しなやりとりの日々に一変してしまいました。
このように、“LET’S GO”は、テクノロジーの進化とともに発展したのです。Level One が出版された後は、国内をはじめ、韓国・タイ・台湾・ベトナムのワークショップやブックフェアなどで、新たに“LET’S GO”を紹介するためのツアーを行いました。また、日本の先生用として、“LET’S GO Starter”や“LET’S GO 1”に、日本語の『みんなでレッツゴー』が追加されました。これらは、先生・生徒分け隔てなく、そして自宅での学習に限らず、教室でも利用できます。「写真左から Carolyn Graham, Barbara Sakamoto, Karen Tsai, Ritsuko Nakata 後列: Let’s Go 編集者」
同じころ、IIEEC は日本の英語教師のために、“LET’S GO”の教え方や MAT PHONICS、読み書き、中学生向け、歌やゲーム、絵本の読み聞かせなどたくさんのワークショップを行っていました。
2000年には、英語で行われるトレーニングプログラムである、「IIEEC認定教師養成講座」を始めました。これは、教え方・子供の脳・学習能力などについて網羅しつつ、さらに多くの知識を学べる場となりました。さらに、この一環として、参加する先生たちが自らのレッスンの仕方を他の参加者の前でデモンストレーションし、批評を受けるというセッションも設けました。
受講者は毎週、英語でタイプした宿題を提出しなければなりませんでした。これは、日本人の英語の先生にとって、教え方を学ぶのと同時に自分たちの英語に磨きをかけることができる素晴らしいやり方でした。
この6カ月の講座で、先生達は MATメソッド®の知識と指導技術を獲得しました。このプログラムは大成功で、先生方はどれだけ生徒たちが上達し、また、口コミで生徒の数が増えたことなどを報告してくれました。
しばらくすると、多くの先生方から、そこまで長期間で労力の掛からない、似たようなプログラムのご要望を頂きました。2005年には、その要望に答えるべく、オックスフォード大学出版局とともにオックスフォード大学に働きかけたところ、私のプログラムが認められ、オックスフォード大学より修了認定証を発行してもらえることになったのです。
これが、IIEEC-OUP 児童英語教師トレーニング認定コースです。このワークショップでは、ためになるアカデミックな講義とともに、実際にカードを使って練習することができるスキルセッションを受講することができます。
これは、年に二回行われ、それぞれ6つのワークショップで構成されています。6つのワークショップ全てを受講し、すべてについてレポートを英語で提出した受講者は、IIEEC英語教師トレーニングセンターとオックスフォード大学出版局の両社から修了認定証が授与されます。【現在はIIEECからのみ修了認定証が授与され、オンラインにてご受講が可能です。 オンライン講座について】
この時期の著書に関しては、“LET’S GO Picture Dictionary”が英語、日本語、スペイン語、中国語で出版されました!
この10年も実りの多い、執筆と教師トレーニングに力を注いだ10年でした。